王や首長が複数で埋葬されていると思われる古墳が多数存在している。ここで廣瀬和雄氏の『前方後円墳とは何か』より、参考資料として掲示させていただく。一部、ブログ主による追記もある。

 廣瀬和雄氏の古墳の追葬の類型 
ⅠA 円(方)のいずれかの墳頂部に複数の埋葬施設があるもの。 さらにこれを三つに細分化して
  ⅠAa 同一墓壙に複数施設 ⅠAc 複数の墓壙 ⅠAbそれらが共存したもの
ⅠB 円部と方部に分かれて埋葬施設があるもの。
ⅠC 同一の木棺や石棺に複数の人物を埋葬
Ⅱ 墳頂部の埋葬施設に加えて、造り出しにも埋葬
Ⅲ 墳丘の裾でも埋葬

以下、各事例を示す。

ⅠA 円(方)のいずれかの墳頂部に複数の埋葬施設があるもの。 さらにこれを細分化して
 ⅠAa 同一墓壙に複数施設 
  三重県石山古墳 三基の粘土槨 武器・武具でまたがって埋置されるという特徴ある。
  岐阜県昼飯大塚 竪穴石槨、粘土槨、木棺直葬
  兵庫行者塚古墳 三基の粘土槨  
    奈良県新沢508号墳、岡山県月の輪古墳 それぞれ二基の粘土槨   ※同時埋葬少なくない
 ⅠAbそれらが共存したもの
  京都府平尾城山古墳 竪穴石槨の墓壙を切り込んで、粘土槨二基を併置
  大阪府豊中大塚古墳(円墳) 木棺直葬と、同一墓壙に二基の粘土槨
  京都府宇治二子山北墳 同一墓壙の中央槨と東槨を切り込んで西槨が作られる。
  福岡県井手ノ上古墳 竪穴石槨と箱形石棺(熟年男性)、石蓋土壙(青年男性)
 ⅠAc  複数の墓壙  ※最も多い
 兵庫県天坊山古墳(円墳) 二基の竪穴石槨が併行
 京都府蛭子山古墳 三基が後円部に併存し、舟形石棺と竪穴石槨におのおの円筒埴輪列の方形区画を伴う。
 福島県会津大塚山古墳 墳頂に二基の割竹型木棺
 岐阜県矢道長塚古墳 東槨から三角縁神獣鏡三面、鍬形石、鉄刀、銅鏃、鉄斧、玉類など 西槨は、三角縁神獣鏡と内行花文鏡三面、石釧、杵形石製品、合子形石製品、鉄刀、鉄槍、鉄剣などともに豊富な副葬品 
 岡山県金蔵山古墳 二基の竪穴石槨にそれぞれ方形区画、豊富な副葬品
 大阪府和泉黄金塚古墳 三基の粘土槨 性差はあるものの、副葬品からどれが傑出しているか言えない。
 広島県三ツ城古墳 時期差をもった三基の箱形石棺   東京都野毛大塚古墳 粘土槨、箱形石棺、木棺直葬の計四つ
 岡山県随庵古墳 竪穴石槨と粘土床の二基が併存
 大阪府弁天山D2号墳(前方後円墳)三基の木棺が切り合って直葬。
 兵庫県茶すり山古墳(円)二基の木棺、いずれも多量の鉄製品
 京都府私市丸山古墳 木棺直葬三基   大阪府長持山古墳 家形石棺が二基

ⅠB 円部と方部に分かれて埋葬施設があるもの。
 神奈川県白山古墳 円部に木炭槨一基と粘土槨二基、方部に粘土槨一基
 大阪府駒ヶ谷宮山古墳 円部に竪穴石槨一基、方部に粘土槨二基。その1号槨から内行花文鏡、鉄刀、鉄剣、鉄斧。2号槨から三角縁神獣鏡、鉄刀など。
 安土瓢箪山古墳 円部に竪穴石槨三基、方部に箱形石棺二基 ※方部は劣位
 香川県快天山古墳 円部に割竹形石棺三基、方部に組合せ式箱形石棺が四基以上
 香川県高松茶臼山古墳 円部に竪穴石槨二基、方部に箱形石棺二基、方部端の裾に箱形石棺四基、また一号竪穴石槨から人体骨二体分
 奈良県島の山古墳 円部に竪穴石槨、方部の粘土槨の被覆粘土に腕輪型石製品133個貼り付け
 福岡県老司古墳 円部に竪穴石槨二基、横穴式石室一基、前方部には横穴式石室一基、墳裾に石蓋土壙一基が設けられ、一号、二号には二体以上、三号は三~四体、四号は二体と多数の人の埋葬されている。
 
ⅠC 同一の木棺や石棺に複数の人物を埋葬
 千葉県猫作・栗山16号円墳 木棺に石枕が三個 周辺から立花など。 同 石神二号円墳 木棺に石枕が二個。 二基の円墳は石枕がなければ一体のみの埋葬とみなされていた。
 熊本県八代市大鼠蔵山古墳群の組合式箱型石棺1号棺に計五体の人骨 八久保古墳、三度の追葬

Ⅱ 墳頂部の埋葬施設に加えて、造り出しにも埋葬
 京都府久津川車塚古墳 長方形の掘り込み   兵庫県行者塚古墳 北東造出し部で粘土槨 

Ⅲ 墳丘の裾でも埋葬     長野県将軍塚古墳など

 2019年現在の資料ですので、ご了承ください。

参考文献
広瀬和雄「前方後円墳とはなにか」中公叢書2019